遺跡発掘現場の風景

古代遺跡の発掘現場。
掘り返された地面にしゃがみ込み、作業をする人々。
 
「教授! 来てください!」
 
一人の作業員が声を上げた。
その作業員の周りに人が集まる。
 
「これは・・・」
「やはり出たか」
「ここなら出るとは思っていたが」
 
土の中から、何かの像の一部がのぞいていた。
それは、人物の像のようであった。
子供に似せた人物像が、腰の辺りまで掘り出されている。
幼い顔が、うつむいていた。
 
「教授、これは、やはり・・・」
「うん。 間違いない」
 
その像は考古学会で論争を呼んでいるものの一つだった。
各地で多数出土されているというのに、それが何なのか、何一つ
解明されていないのだ。
神像なのか、あるいは政治的な何かのシンボルなのか。
その像は、中には例外もあるものの、たいていの場合、多数の
人員が収容されたであろう建造物の遺跡と共に発掘された。
また、その建造物の多くは、整地された広場に隣接していた。
しかし、なぜ、この像がそこにあるのか、あるいは、なぜ、そこに
なければならないのか。 その意味が誰にも分からないのだ。
 
「お前は・・・ いったい何者なんだ・・・」
 
紀元45世紀。
大滅亡時代を乗り越え、人類は再び文明を築いていた。
それは、私たちの生きる21世紀と、それほど変わらない世界。
しかし、それは、私たちを知らない世界。
私たちの記憶を、遠い過去の中に失ってしまった世界。
 
二千年の時を超え、それだけは変わらぬ陽の光の下、人々は、
その像の幼い顔を・・・
二宮金次郎の顔を、ただ、見つめていた。

前のページに戻る


meisoukairo@yahoo.co.jp