職員会議の風景

新年早々にもかかわらず、私立最北端高等学校では臨時の職員会議が開かれていた。

教頭
「それでは職員会議を始めたいと思います。
既に説明してあるように、女子生徒の服装に関してなんですが・・・」
校長
「ついに来るべきものが来たというか、なんで今頃というか」
教員A
「別にどーでもいいんじゃないですか、服装なんて個人の自由で」
教員B
「そうそう。 だいたい制服だってないんだから、この学校。
ミニスカートのセーラー服だけを禁止するってわけにもねぇ」
校長
「そうは言っても、健康上の問題もあるし、PTAも問題視してるし」
教員A
「健康上の問題ったって、学校は暖房してあるしなぁ」
教頭
「通学時は吹雪の中を歩くことになります。
恐らく彼女たちは今だけの少しの我慢と考えているのでしょうが、
体を長期間冷やし続けることは婦人病の原因にもなりかねません」
教員C
「通学時にはコートを着てますけどね。 でも、婦人病って?」
教員D
「体を冷やしすぎると生理不順から不妊の原因となることも考えられます。
実際にそれが原因で不妊になるとまでは言えませんが、注意は必要でしょう」
教員B
「なんでそんなこと知ってるんですか? っていうか、本当ですかそれ?」
教員D
「いや、それが、あの、実を言いますと、私の妻が・・・」
教員B
「あっ・・・ や、いや、すみません。 そうでしたか、奥さんが・・・」
教員D
「夏にカキ氷を食べ過ぎて下痢をしまして、そのとき近所の人に言われ・・・」
教員B
「不妊じゃないのかよ! しかも近所の人って!」
教頭
「職員会議で漫才をするのはやめてください」
教員A
「少子化も進んでいるし、不妊はまずいなぁ」
教員E
「熊も狐も裸で冬を越しています。 しかし、彼らは不妊になっていません。
今は確かに女子高生はこの環境に適応できていないかもしれませんが、
やがて進化が進めば彼女たちの脚にも分厚い脂肪と立派な毛皮が・・・」
教員F
「制服を定めてはどうでしょう?」
教員E
「無視された・・・」
教員C
「単純にミニスカート禁止でいいんじゃないですか? 厚着をしている
生徒もいますし、制服にすると逆に今度は彼らが薄着になってしまう」
教員A
「制服を決めてもセーラー服じゃ意味ないもんなぁ」
教員B
「あれ? でも、ミニスカートって、もともと禁止だったような?」
教頭
「校則の解釈の仕方によりますが、一応禁止ということになってます」
教員E
「校則で決まっているのなら、簡単です。 没収しましょう、没収。
代わりのスカートを学校で用意して、その場で生着替えをさせれば・・・」
教員F
「ミニスカートにできない制服に決めてはどうでしょう?」
教員E
「また無視された・・・」
教員D
「男女とも学生服ですか」
教員A
「それは嫌だなぁ」
教員C
「まぁ、学生服とは限らないでしょうが、やはりスラックス系ですかね」
校長
「私はキュロットスカートなんか可愛くていいと思うのだが」
教員B
「脚、出まくってるじゃないですか」
教頭
「とりあえず、制服にするかどうかの決を採りたいと思います。
反対の方、または、別の意見をお持ちの方はいらっしゃいますか」
全員
「・・・」
教頭
「では、来年度を移行期間として、再来年度から制服とします」
教員A
「問題は、どんな服にするかだな」
教員E
「私は看護婦さんなんか好きなんだけど・・・」
教員F
「あぁ、いいかもしれないですねぇ」
教員E
「あれれっ?」
教員D
「確かに。 あのデザインならミニスカートは考えにくいですね」
教員C
「なるほど、実際にナースにするかは別として、考え方はいいですね」
教員B
「スチュワーデスなんてどう?」
教員A
「スッチーねぇ。 この前イメクラに行ったら、かなりミニでしたよ」
教員B
「あぁ、そういえば・・・ でも、ナースもミニだったなぁ?」
教員F
「いや、あれは、そういう風に初めからデザインされているからで、
きちんと制服としてのデザインにしてあればミニにはできないでしょう」
教員D
「学校独自のデザインにすれば、自分で裁縫でもしない限り無理でしょうね」
教員A
「でも、女子高生がナースやスッチーの格好ってのもなぁ」
教員E
「だったら、え〜と、え〜と・・・ ミニスカポリス!」
全員
「アホかーっ!」
教員E
「怒られた・・・」

こうして結論の出ないまま、白熱した不毛な議論は延々3時間にも及び、
最終的には校長の鶴の一声により私立最北端高等学校の再来年度からの
女子生徒の制服はチャイナドレスに決定したということです。

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meisoukairo@yahoo.co.jp